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第10回宇宙建築賞優秀作品発表

第10回も非常にレベルの高い応募作品が集まり、心より感謝申し上げます。

 

今回のテーマは、「宇宙ビジネスと建築」でした。
今回の応募者の皆さんから寄せられた様々なアイデアが
実現する日を期待しています。
 

第10回宇宙建築賞総評

 宇宙建築賞第10回目のご開催おめでとうございます。実行委員会及び関係者の皆様、歴代の応募者の皆様に敬意を表したいと思います。

 大きな節目となる今回は、月の南極、月・火星の縦孔を舞台とした「宇宙ビジネスと建築」がテーマでした。

 JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」による日本初の月面着陸成功、アメリカ企業による民間初の月面着陸成功が続き、

とてもタイムリーなテーマだったと思います。皆さん、ビジネスの視点も取り入れながら、想像の解像度を上げて設計して下さっていたことが印象深かったです。

 地球上と違い、宇宙空間では人間はそのままでは生存できないため、宇宙建築に守られて生活することになります。

宇宙建築がどのような環境を提供するかが、正に人々の生活を左右します。だからこそ、一つ一つのハードにどのような意味を持たせるか、どのような暮らしを想定し、何が課題になりそうで、何にワクワクするのか、そこで暮らす人々に寄り添った作品が多かったことを嬉しく思います。宇宙建築とは、未来の生活や暮らしを設計していく壮大な挑戦なのだと改めて感じました。

 応募下さった皆さんが、今回の挑戦を通じて得た大きな視野を活かして、前途を切り拓かれることを期待しております。そして、皆さんが設計下さった宇宙建築がいつの日か実現していくことを楽しみにしております。

 

宇宙建築賞 特別協力者

宇宙飛行士 山崎直子

 今回「宇宙ビジネスと建築」というテーマで募集が行われた。どの作品も、月面の厳しい環境を逆に利用したユニークな建築物の提案であった。各作品は地上と同等な環境、あるいはそれ以上の環境をどのように月面で実現するかに重きが置かれていた。例えば、月面にある縦穴、横穴などの巨大な空間を構造物として利用する、太陽光や太陽エネルギーを利用する、高温から低温までの温度差を利用する、月面では重力が地上の1/6であることを利用するなどである。

 宇宙探査は、これまでの各国宇宙機関による探査から、民間企業が参入する時代となっている。探査の目的も、科学的な調査から、人が滞在して観光する、あるいは地上では得られない環境を享受するようになるであろう。今回の応募作品は、このような時代に向けたビジネス提案であった。

「LUNAR PRIMITIVE HUT」は、横穴に人々が滞在する時代に、縦穴を天窓として利用する提案である。洞窟生活に自然光の青空を提供するものであり、人々が集まる公共スペースを建築する。

「MOONBALLOON」は、月面の横穴の気密性を利用して、その入口のみの封止により広大な横穴空間を与圧エリアとして使用しようというものである。宇宙服無く探査活動ができるようになる。

「空舞う魚影、光の幻想」は、月面に水族館を建設する提案である。月面環境での海洋生物の研究、地球外での種の保存、および人間が定住する時代でのレジャーの提供が考えられている。

他、入選には至らなかったが、下記の作品についても紹介を行う。

「Ctrl+S」は、安定した環境である月面を物資の長期保管庫として利用する提案である。月面の日照部と日陰部の大きな温度差を利用して様々な温度環境を作り上げ、それぞれに適切な温度環境で保管するというものである。放射線や隕石からは、地下に保管庫を建設する提案になっている。

「Luna front」は、月面の縦穴およびそこからつながる横穴の立体構造を利用して効率的に構造物を建築する提案である。また、軌道レールを設置することにより、縦穴・横穴に限らず地表面までもつながる領域に街を建設する提案である。将来的には横穴の天井も使用して空間を有効活用する。

「Luna Stadium」は、月面に野球場兼ホテルを建設する提案である。人々が月面に定住する時代には娯楽が必要であり、また1/6G下での野球がどのようになるか、興味が持たれるところである。

「膜が織りなす多層都市」は、気密膜によって、1気圧領域から外部の真空空間までを何段階かの圧力領域に分け、各動植物に適した環境を提供し、飼育などに利用する。人間が居住して食料生産も必要になる時代を見据えた提案である。

「静止した世界に動きを与える」は、居住区域内に太陽エネルギーにより上下するエレベーター領域を設置し、人々はその動きに合わせて階層間を移動するというものである。

一方、今回の提案には、地上での生活の延長線上にない奇抜なビジネス提案を行っていた案が少なかったという印象もあった。近未来の「ビジネス」を考えると、人々が共感を得やすい現実的な提案が必要であるが、遠い将来を見据えた提案もあっても良いのでは無いかと感じた。

JAXA/SLS搭載超小型探査機プロジェクトマネージャー

第10回宇宙建築賞 審査委員長 橋本樹明 

 今回の宇宙建築賞の作品で目立ったのは、「人間との接点」である。地球の環境を月に再現する、それも人間がただ過ごせるというだけではなく、地球と同じような環境で過ごせることを目指す作品が多かったことに私は注目した。建築は人間が住む、活動する空間を想像することが目的である。その意味では、月面における人間活動を第一に考えた提案が多かったことは、ある意味回り回って当然なのかもしれないが、それを一生懸命突き詰めようとした参加者の皆さんの努力を讃えたいと思う。一方で、今回の提案でビジネス的な側面が少ないことが若干気になった。今回のテーマに「ビジネス」というものを据えてあるのだが、ビジネスとしての持続性、資金集めなどに関する問題などにもう少し思いを寄せて欲しかったというのが正直な感想である。確かに、月面におけるビジネスを考えるのは難しい問題である。というのは、現時点においても宇宙ビジネスは低軌道領域までが主であり、月面ビジネスとなると今から立ち上がっていくという段階である。難しいことは確かだが、ぜひここのところに切り込んで欲しかった。ビジネスといっても、お金を儲ける、というだけのことではない。それも一つの目的であるが、ビジネスの大きなポイントは、自身が実現したいことを、いかに人やお金を集めながら実現し、持続させていくか、その点に尽きる。月面に人間を大切にした建築を作り、それをコアとしたビジネスを展開する。あるいは月面におけるビジネスの一環として人間を大切にした建築物を作っていく。このようにすれば、人間にもよく、ビジネスにもよく、そしてそれが社会を変えていくのであれば社会もよくなる。ビジネスでよくいわれる言葉に「三方よし」というものがある。もともとは「買い手よし、売り手よし、世間よし」という、ビジネスの理想を唱えた言葉である。買い手を月面生活者、売り手を我々、そして世間を社会とすれば、月面におけるビジネスはまさにこの三方よしという言葉に集約されていくと私は考えている。このようなビジネスの実現は地球上でも大切なことである。そのための例として建築を考える。そのような考え方も重要になるだろう。今回の提案を機に、こういったビジネスという視点での建築の考え方を身に着けて欲しい。

合同会社ムーン・アンド・プラネッツ

審査員 寺薗淳也

​審査結果

1位:金メダル(1作品)

© 2016 TNL

「LUNAR PRIMITIVE HUT」
村上怜那、諸江 一桜

審査員 荒木慶一

京都大学大学院工学研究科建築学専攻

地球で当たり前だと考えていたものが、宇宙や月では当たり前でなくなる。その中でも、人々に必要とされるものを提供することで、思いもよらないビジネスにつながる可能性がある。本作品は、縦孔での生活の中で必要とされるものを考えた結果、月にも青空を提供することを提案している。様々な制約が強いられる月面での居住空間において、光にあふれた空間を提供することで、人々の生活を豊かにしたいとの思いが伝わってくる作品である。これらの点が審査員から支持され、1位の評価を得るに至った。

2位:銀メダル(1作品)
3位:銅メダル(1作品)

​上記の入賞作品データと審査員の方々の講評も

近日中に公開予定です。

 

 

© 2016 TNL

「MOONBALLOON」

大石真輝、

都丸優也

「空舞う魚影、光の幻想

~クラウドファウンディグィングを活用した宇宙水族館の構想~

田村哲也、大野維親、

中野太耀

審査員 大貫美鈴

宇宙ビジネスコンサルタント

 

 月面の洞窟に宇宙服なしでいる。まさかの提案に衝撃を受けた。月を五感で感じるという想像を超えた発想が強烈である。恒久的

月探査や月面居住に高い関心が集まっている昨今、さまざまな月面での活動が提案されているが、宇宙服を着用しないで月面の自然環境に直接接していることを想像したことはなかった。この作品は

マリウスヒルの縦孔の横方向を空気を充填した月の地下空洞をバルーンで完全密封して、月に人がTシャツ環境で過ごせる空間を創るというものである。

インフレータブルのバルーンで遮蔽できるのかという根本的な疑問がまず浮かぶ。たとえばダムの建設の止水や地盤改良で用いられるグラウトのような完全密封できる建設・土木技術を併用するなど

どうであろうか。遮蔽に関しての今後の検討や技術の進展を期待したい。大小さまざまな月面地下空洞を研究、実験、オフィスなどの用途向けに「月のワンルーム」ビジネスモデルで利用のサイクルをまわしていくビジネス面での検討には現実味を感じた。

 月に触れるということはどういうことなのか。ロボットでなく

人間が五感で享受できる探査や生活とはどういうものなのか。

建設・土木技術で他の惑星環境に人間が直接触れることができる未来を描いた「ムンバルン」に高揚感を覚えた。 

審査員 田口優介

AXIOM SPACE

 

 まずは、スケールの大きなアイディアに感銘を受けました。このような施設が月面にあれば、そこに暮らす人々にとって精神的な癒しになるのは間違い無いですし、大きな水壁があることによる、放射線の遮断効果は期待できるのではと思います。一方で、水自体が放射性物質となってしまう為、それを除去する方法が

ない限り、水槽の中の水棲動物への影響が懸念されます。また、ただでさえ貴重で重要な資源である水を、このような使い方をすることを正当化するのは難しいかもしれません。

 そして何よりも一番の問題は資金です。このような巨大な水槽を月面に作るには、数千億、もしかしたら兆単位の資金が必要になるかもしれません。クラウドファンディングで集まるような

金額ではありませんし、NFTを活用して権利化しても、全く現実的な金額ではありません。どのような仕組みで、月面水族館を巡るエコシステムが構築できるのか、そもそも最初にこれを建設する為のお金をどうやって捻出するのか、是非時間をかけて真剣にご検討ください。

 このような水族館が月面にあると思うだけでワクワクしますし、実物を是非自分の目で見てみたいので、これを少しでも現実に近付けられるよう、是非ご検討を続けてください!

最後に、第10回宇宙建築賞に関わっていただいた全ての皆様に感謝申し上げます。


​この度は第10回宇宙建築賞にお力添え頂き、本当にありがとうございました。

© 2025 TNL

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