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第12回宇宙建築賞優秀作品発表

第12回もたくさんの応募作品が集まりました。心より感謝申し上げます。

今回のテーマは、「エンタメ×ケンチク」でした。

今回の応募者の皆さんから寄せられた様々なアイデアが実現する日を期待しています。

第12回宇宙建築賞総評

 

第12回宇宙建築賞のご開催おめでとうございます。干支でいえば一回りの期間、継続してこられた関係者の皆さま、応募くださった歴代の皆さまに敬意を表します。

 

今回のテーマは、「エンタメxケンチク」。幅広いテーマだからこそ、難しいことも多々あったと思います。応募くださった皆さんは、場と環境設定を考え(宇宙空間なのか、月面や火星なのか)、そこでの暮らしを想像し、多様なエンタメを設計して下さっていました。全ての作品に対し敬意を表したいと思います。エンタメの幅も広く、好奇心あふれるもの、競技的なもの、癒し、文明の進化を感じさせるもの、など様々な観点がありました。エンタメを生活の中の付随的なものと捉えるのではなく、生活そのもの、死生観そのものに直結するような壮大な発想として捉えていることに、とても感銘を受けました。

 

エンタメは、技術中心ではなく、人間を中心に捉えるからこそ、これからの宇宙時代に大切なことだと思います。より多くの人が宇宙に行き、住むような時代になると、これまでの常識にとらわれない新しい社会が生み出されていくかもしれません。その際に、人同士を繋ぐエンタメ、地球と宇宙をつなぐエンタメ、新しい可能性を切り拓くエンタメは、ますます大きな意味を持つことと思います。皆さんの発想力と構想力を誇りに思います。皆さんが描いた作品のビジョンが、近い将来に実現していくことを楽しみにしつつ、応募くださった皆さまが、更に挑戦していかれることを心より応援しております。

 

宇宙飛行士 山崎直子 様 

 

 

 

​審査結果

1位:金メダル(1作品)

© 2025 TNL

宇宙の風に乗る SOALR SAIL GRAND PRIX

​吉川和博

KYYKa+d

講評: 審査委員長 國中 均

JAXA宇宙科学研究所名誉教授

総合研究大学院大学特任教授・執行役

第12回宇宙建築賞、今年の課題は、“行く”・“住む”・“探査する”・“働く”から、いよいよ「エンタメ✕ケンチク」と“楽しむ”へと発展

してきましたね。栄えある金賞は、「宇宙の風に乗る SOALR SAIL GRAND PRIX」に輝きました。

 「SOALR SAIL」とは、今から100年前1920年代にロケット研究の開祖、ロシアのツィオルコフスキー博士が提案した技術で、軽量な薄膜面を大きく展開して、太陽から放たれる光を受けてその圧力を推力に変換して、燃料無しで宇宙を航行するものです。

JAXAは2010年に10m角のイカロスを打ち上げて、世界で初めて深宇宙光圧航行を実証しました。「SOALR SAIL」を用いた宇宙レースのアイデアは、もうすでに長友信人教授が「ソーラーセイル: 宇宙帆船とルナカップレース 」(1993年、丸善出版)として出版されています。ここでは、複数のSOALR SAILが1機のロケットで宇宙に打ち上げられ、帆を張りスパイラル上昇して、月の裏側の写真を撮った競争艇が勝利というルールでした。しかし残念なことに、審判艇や観望台までは想定されていませんでした。

 「宇宙の風に乗る SOALR SAIL GRAND PRIX」計画では、月地球系L1に浮かぶ拠点Herios Gateに集う多くの観客が見守る中、

複数の「SOALR SAIL」が発進します。太陽光に加えてHerios Gateから発射される強烈なレーザー光によって「SOALR SAIL」達は

加速されます。その後、太陽帆を操り精密誘導して、月重力スイングバイのための回廊に正確に突入させます。まさにここが各チームの腕の見せ所。引き続き太陽光帆により操舵して、宇宙空間に設定されたゴールをいち早く通過した競争艇が勝利します。

本提案は、太陽光圧航行だけでなく、レーザー光圧によるライトセイル技術や月重力スイングバイ技術も加えて、観客を動員しながら

宇宙を縦横無尽に使いこなしたエンターテイメントとして提案されました。その発想力と統合力を高く評価します。

2位:銀メダル(1作品)

月面を縫う重力の旅

梅本悠月

大分大学理工学科建築学プログラム

講評: 審査員 大貫美鈴

宇宙ビジネスコンサルタント

「月面を縫う重力の旅」は、月面という特異な地形、月の重力や遠心力による異なる重力、月面や地球や宇宙の眺望を体感できる移動そのものがエンタメとなる建築物の提案で、軌道上の旅を1つの物語として構成している。地球上におけるローラーコースターは遊園地で傾斜のあるレール上を車両が重力で高速走行するアトラクションで、高速で急勾配や急旋回するスリルを体感する絶叫マシーンであるが、この作品の月面ローラーコースターはスリルを超えた体験が得られる建築物に進化している。

 

「月面を縫う重力の旅」のローラーコースターは起伏の激しい月面を疾走するモビリティ型アトラクションであり、月面を縦横無尽に走り抜ける。クレーターを上りリム(淵)を走行、溶岩チューブの内壁に沿った連続ループを回る重力体験、未知の落下体験「エアタイム」が体感できるとともに、月面や地球や宇宙の視覚的な体験は至上の眺望である。地球におけるローラーコースターは重力を利用して最初の急降下以降は慣性で走り続ける仕組みであるが、月面ローラーコースターはリニアで加速、車両は音もなく走り続け、加速は緩やかで浮遊感を感じる。また、回転する座席と前後左右による遊びによる重力や浮遊感で乗客のエクスペリエンスを最大化させる建築物となっている。

 

「月面を縫う重力の旅」では月面ならではの新しいエンタメが創造されている。月面ローラーコースターの新たな体感と視覚的体験は新しい五感を拡張して、喜びや感動といった楽しみの地平を開いている。月面ローラーコースターはモビリティという移動そのものがエンタメであり、アトラクションを超えて移動という機能を保有していることから、未来の月面インフラとなる可能性もありそうである。「月面を縫う重力の旅」は、機能も兼ね備えた月面における壮大なランドマークになる未来の月面社会を想起させる作品である。

3位:銅メダル(1作品)

© 2016 TNL

UI

小林智美, 石津羽唯, 鈴木汐夏, 片岡煌夢 

済美高等学校自然科学部

講評: 審査員 荒木慶一

​京都大学

回転重量場において螺旋を描く噴水の絵がとても美しく印象的である。一つの施設の中で半径を変ることで地球,火星,月と同じ重力を持つ空間や無重力空間を実現するというアイディアはシンプルに見えて発想は容易でない。それぞれの場を行き来できることで,利用する人々が様々なエンターテインメントを楽しむことができるなど,大きなポテンシャルを秘めている。これらが評価され、数ある優れた作品の中で銅メダルを獲得することとなった。

入賞(2作品)

© 2016 TNL

裸の月あい

宮下湧気、柴田裕斗、砂川文良

東海大学大学院工学研究科建築土木工学専攻

講評: 審査員 寺薗淳也

合同会社ムーン・アンド・プラネッツ

近年、AI(人工知能)の普及に伴って、ホワイトカラーの仕事の代替が進むという予測が各地で立てられている。そしてそれに伴い、ブルーカラーの仕事に改めて光が当たりつつある。アメリカでは、ホワイトカラー職よりもブルーカラー職の方がより高い給与をもらえる事例もあるとのことだ。

私自身は体が弱い(体力に自身がない)こともあり、あまりブルーカラー職というのは最初から選択肢としてはなかったのだが、それでも、ビルの建設現場や道路工事の様子などをみると、「何ができるのか」とワクワクする気持ちはいまも変わらない。

将来の月面開発においても、こういったブルーカラー労働者の需要は必ず発生するに違いない。となれば、彼らが楽しめる、あるいは心を癒せる場所も必要になるのではないか、というのがこの「裸の月あい」である。私自身はネーミングにも惹かれたが、着眼点の新しさがまずなんといっても心に残った。

月面に存在する玄武岩を利用した岩盤浴により、他国籍の作業員が共に「裸で」癒やされる、という仕掛けである。実際には蓄熱・発電・水供給・排熱回収が1サイクルで回る設計となっており、小さな都市、あるいは小さな宇宙基地(あるいは小さな温泉施設?)のような意味合いも持っている。

正直なところ、この提案についてはよりブラッシュアップが必要な箇所が多い。例えば、玄武岩が月の南極域に豊富であるか、採取が難しい場合に斜長岩など高地の岩で代用が可能か、太陽光が乏しい南極域において蓄熱→発電→復水のサイクルが本当に回せるのか、といった点である。また、文化の点からいえば、そもそも他国籍の作業員が裸(というかほとんど裸の状態)での交流を望むのか、という点も考える必要がある。

しかし、そういうことは小さいことである。ポイントは、月面において本当にエンタメ、あるいは癒やしが必要な人たちに届ける癒やしである。頑張って働き、肉体労働で疲れ切った体を癒やすと共に、複数国籍の人たちが一つの施設に集まり、癒やされるという構図。これは、従来考えられてきた月面基地、あるいは宇宙エンタメ施設にはまったくない発想といえる。その切れ味の鋭い着眼点は、月面開発という、とかくふわふわとした概念を現実化していく大きな力になっている。

遠くない将来、月の南極で、世界中から集まった労働者たちが岩盤浴で癒やされ、小さいが確実な国際交流を行う。そんな世界を夢見させてくれる、いや、夢ではなく現実のものとして私たちに提示してくれる、珠玉の内容である。

© 2016 TNL

LIGHTHOUSE AT MOON

榛葉琉恩、河野慧士

多摩美術大学、美術学部、建築・環境デザイン学科

講評: 審査委員 佐藤達保

株式会社竹中工務店 設計部グループ長/宇宙建築タスクフォース リーダー

第12回宇宙建築賞のテーマは「宇宙×エンタメ」です。
今回の舞台は、無人探査や宇宙飛行士による初期活動の段階から、民間人が興行や観光を目的に宇宙へ向かう時代へと、大きな転換期を迎えた時代設定です。ここでは、明確なユーザー像(ペルソナ)と提供価値を設定し、地球を離れた空間で「誰が、どのような目的で、何を体験するのか」を具体的に描くことが求められました。
さらに「建築」をテーマとする以上、アイデアにとどまらず、空間として成立させることが重要です。独創性、計画性、そして表現力を主な評価基準として審査を行いました。

入賞作である「LIGHTHOUSE AT MOON」は、月面クレーターの斜面をスノーボードゲレンデに見立て、併設されたレストランや宿泊施設から壮大な“雪景色”ならぬ月景色を楽しむという、エンターテインメントと観光の本質を的確に捉えた秀逸な提案です。
月面のレゴリスが地球のパウダースノーに近いのではないかという着眼点には高い独創性があり、施設計画においても、月面という過酷かつ閉鎖的な環境に対応するための設備や構成が丁寧に検討されています。

また、モノトーンを基調としたプレゼンテーションボードの表現も美しく、荒涼とした月面と宇宙が、圧倒的なスケールを持つ「大自然」として立ち現れてきます。
ちなみに、重力が地球の1/6である月面では、滑走時の加速度も同様に1/6となるため、通常の斜面ではスピードが出にくい一方、空気抵抗がないため、超長距離の斜面であれば地球以上の高速滑走も想像できます。さらにジャンプ力や滞空時間は約6倍となることから、意外にも安全性の高いスポーツになる可能性も感じさせます。

満天の星空の下でクレーターを滑走する体験は、間違いなく月面ならではの高付加価値なエンターテインメントとなるでしょう。
本提案は、「宇宙×エンタメ」というテーマに対する説得力と夢を兼ね備えた、印象深い建築ビジョンを提示した作品です。

1次審査通過作品
全応募作品

最後に、第12回宇宙建築賞に関わっていただいた全ての皆様に感謝申し上げます。

この度は第12回宇宙建築賞にお力添え頂き、本当にありがとうございました!

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