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第9回宇宙建築賞優秀作品発表

第9回も非常にレベルの高い応募作品が集まり、心より感謝申し上げます。

今回のテーマは、「First Place」でした。
2023年は、民間初の月面着陸へのチャレンジが行われ、

残念ながら完全なミッションの成功とはなりませんでしたが、

いつの日か必ずこのような経験が生かされる日が来るものと信じます。

 

いずれ、月面の居住スペースの構築へ向けたFirst Missionも始まることでしょう。

今回の応募者の皆さんから寄せられた様々なFirst Placeのアイデアが

実現する日を期待しています!

第9回宇宙建築賞総評

 

 第9回宇宙建築賞のご開催おめでとうございます。近年、アルテミス計画に代表されるように国際的に月を目指す動きが本格化し、月へ一歩を印すであろう日本人宇宙飛行士候補者も14年ぶりに2名選抜され、ispaceの挑戦のように民間で月を目指す動きも加速しています。そんな中、月面の居住スペースを構築するというタイムリーなテーマであるが故に、豊かなデザイン性と共に、実現性とのバランスも要求される挑戦的なテーマだったと思います。

 特に、「First Place」ということで、空間を小さく限定したことで、実際の宇宙船の開発のように制限が厳しい中での工夫が必要だったと思いますが、応募下さった皆さんの発想の大きさに大変感銘を受けました。いずれの作品も、月への愛情や畏敬の念を感じると共に、人類が宇宙へ活動を広げていく礎になることへの意味を考えさせられる奥深い作品だと思います。

 これらの「First Place」が、人類の文明の発展につながっていくことを心より期待し、深いテーマに挑戦下さった皆様に敬意を表します。

 

宇宙建築賞 特別協力者

宇宙飛行士 山崎直子

 

 

 

​審査結果

1位:金メダル(1作品)

© 2016 TNL

The Moon is a Harsh Mistress

佐藤達保、田中匠、天野千裕、内山元希、塩月卓也、内海洋一、松岡竜也

荒木慶一  審査委員長

名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻

本作品は、リングを立体的に組み合わせて鉛直方向に積み重ねることで、縦孔を介してその下に広がる月面の地下空間と地上をつなぐ高さ150mのタワーを建設することを提案している。建設地として月の縦孔を選択し、居住が比較的容易な地下空間と地上をつなぐ建築物を設計することで、月面居住のFirst Placeとしてメッセージ性の高い作品となっている。また、リングを立体的に組み合わせるという独自のアイディアを提案することで、建築物としての美しさのみならず、月までの可搬性、現地での施工性、構造性能など、多くの点で実現性への配慮が行き届いた作品となっている。メッセージ性と実現性を両立させるのは極めて困難で、どちらかのみの提案となる作品が多い中、これら両面で優れていることから審査員全員一致で本作品が一位に選ばれた。個人的にも、こんなタワーが月面の縦孔で建設されるところを是非見てみたいと思わせる魅力的な作品である。 

2位:銀メダル(1作品)
3位:銅メダル(1作品)

​上記の入賞作品データと審査員の方々の講評も

近日中に公開予定です。

 

 

© 2016 TNL

「Interstellar」

赤川可奈、宮元詩乃、田村光、横山朋哉、石田孝之介

「布を重ね、

   月を着こなす」

松本乙希、後藤龍之介、北村陸

 

津田雄一 審査員

宇宙航空研究開発機構/JAXA

 

 月で生活するには,快適性は追求したいものの,まずは生命維持のためのリソースや安全性の観点が重要であろう.本作品「Interstellar」は,水を生活用水の他に熱制御と放射線防護にも活用することを提案している.水の貯蔵と循環システムを機能的に配置することで,これらを両立する居住システムの実現を目論んでいる点が技術的に面白い.完成後だけでなく建設プロセスの中途においても放射線防護が可能となっている.直径4m,高さ4mという限られた輸送スペースと,建設後の広く快適な居住空間を両立させるためのユニークな床面展開方式を展開ペーパークラフトで実演している点も評価が高かった.総じて,芸術性が高い作品が多い今回の作品群の中で,芸術性に加え,機能面での考察,技術上の狙いが伺い知れる作品となっている.

大貫美鈴 審査員

宇宙ビジネスコンサルタント

 

 これまで見たことのない風景に惹き込まれる。ユニットやモジュールによる月面居住という固定概念はここにはない。課題は月面居住の最初期の第一歩目となる施設、ファーストプレイスの提案。4m×4mの円柱に布を収納して輸送、月面(北極地点を想定)で展開する。次世代のインフレータブルで創るファーストプレイスと理解した。布に着目している点が興味深い。月面の過酷な環境を布で克服する。服は布をシェルターとする最小単位でその拡張としての居住へ、身体や生活のミニマムなシェルターから暮らしを営む空間として発展していくことが予感させられる。宇宙服は最も小さな宇宙船と言われる。有史以来、地を駆け、海に潜り、空を飛んできた私たち人類は服によって限界を拓いてきた。そして今、宇宙服によって宇宙に活動領域を拡大している。宇宙服のように布を重ねることによって、プライバシーを確保しながらも「他人を感じる」空間、楽しい声が聞こえてくるような空間を布がみごとに創っている。

入賞:(2作品)

「地球望遠住処」

齊藤翼、岸田淳之介、

浜野智明、和田浩平太、

末定義暉

「Starting With Fungus」

匡禹霏、比留間ひかる、

上野日向、堀上ひかり

 

永井翔真 審査員

株式会社 OUTSENSE

 本作品は、常に地球を眺められる望遠鏡としての機能を持った居住施設を月面に建設し、殺風景な月面においても自然の息遣いを感じられる生活を提案している。「First Place」として高さ4m、直径4mの円柱に収まるように輸送しなければならないという制約の中で、螺旋状の構造体をバネとして使い、鉛直に展開することで広い居住空間を得るという発想に驚かされた。そして、展開後には高さ16mを超える円筒となり、その頂部には巨大なレンズが設置される。これにより、建物自体が大きな望遠鏡として機能し、地球を大きく感じることができるとしている。地球から隔絶された空間である月面において、常に地球を身近に感じられるということは、長期滞在するクルーにとって心理的に大きなメリットがあるであろう。月面から地球を眺めたいという想いは、月面を訪れたい多くの人に共通する想いである。その想いをダイレクトにコンセプトに落とし込み、「First Place」という制約の中で成立させた点が評価された。

 

寺薗淳也 審査員

合同会社ムーン・アンド・プラネッツ

 私は最初にこの作品をみたとき、「菌」という発想に正直疑問を持ってしまった。ましてそれを壁として利用するということは、少なくとも地球上の住居の発想では懐疑的にみられる方向性ではないかと考えた。しかし、菌の生命力は強靭である。実際に月でも、アポロ12号が無人探査機サーベイヤー3号の部品(カメラ)を持ち帰った際、そこから細菌がみつかっている。地球の細菌が月面で生き延びられることはすでに証明されているのだ。過酷な環境であるからこそ、このような実証済みの菌の生命力を発揮させることは、最初の一歩(First Place)を築いていくためには順当ではないか、そのような発想も面白いという感想を抱いた。月である以上、地球上との発想の切り替えが必要だ。もちろん、本作品に描かれているような菌との共生を実現させるためにはさらなる検討が必要である。しかし、ここでは宇宙建築賞の創設理由に照らし、将来の大きな可能性に賭けていきたい。菌が人類の宇宙滞在の可能性を拓く「宇宙菌活」の日がやってくるかも知れないのだ。

金銀銅各 1,入賞 2
最後に、第9回宇宙建築賞に関わっていただいた全ての皆様に感謝申し上げます。


​この度は第9回宇宙建築賞にお力添え頂き、本当にありがとうございました。

© 2025 TNL

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